記事分類:雑記

2012年5月15日

佐賀一郎

向かいのホームで、携帯電話を耳にあてて、直立不動。

通話待ちの、今にも頭を下げ、お辞儀をしそうな風情である。

 

そういえば、つい先日、自分が言われたことである。

そして、「社会人ですね」という味わい深いコメントを、
もらったのだった。

 

パントマイムである。

駅のホームが、すなわち舞台である。

そして、向かいのホームからすると、こちらが舞台となり、

対向した舞台、もしくは見開き状の舞台がここに誕生する。

登場する電車、乗客は、さしずめ場面切り替え装置である。

 

さて、早速ここで場面切り替え──。

これは、相手を鑑賞しつつ、鑑賞される自分を思いながら演じる舞台である。あるいは、相手になりきる自分と、相手がなりきる自分を思う舞台である。

 

あなたとわたし。

書割と書割、書割の書割。

2人称の劇場、2人称のゲーム。

あれか、これか、

  あれや、これや、

    あれも、これも、

それとも……、あれ、これは人生?

 

電車が到着する。

ドアが……、開かないので「開く」ボタンを押す。